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「数えずの井戸」 著:京極夏彦
番町皿屋敷を京極さんなりに解釈した、もうひとつの物語。
何かが欠けている、足りない、欲しい・・・見たままが全てなのです。
それぞれに違和感を感じながらも日々を過ごしている若者たちの葛藤です。
葛藤というよりはずっとジリジリしている感じですかね。
何かの拍子で日常が崩れた時、その違和感がどうなるのか・・・。
なんと言うか、色々考えすぎていてみんなの気持ちが分かりません。
一番わかりやすかったのは「欲しい」という吉羅さまと、漠然としたモヤモヤと苛立ちを抱えている主膳ですね。
「手に入る物は何が何でも手に入れる、手に入れられない物など欲しない」という吉羅さまの考え方がビシッと一本筋が通っていて惚れ惚れするくらいカッコいいです。
何だか煮え切らない人が多いこの井戸には貴重とも言えるくらいはっきりとわかりやすいですね。
恋する乙女でもあった吉羅さまがとても可愛らしくもありました。
まあ、そんな様子は見せずにツンツンしてばかりでしたけどね。
どうしようもない主膳ですけど、抱えているモヤモヤいらいらは何だかわかるのですよねぇ。
だからと言って無意味な行動を取る意味はわかりませんけど。
又さんと徳次郎さんが出てきました!
徳次郎さんが出てくるとは・・・小平次さんでは「いけすかないヤツ」って思っていたのに、月日は流れているんですね。
又さんがヘマをやったと、辛そうにしたって、このちょっとでも前巷説のことを思い出させてくれる仕草がたまりません。
ええ、山崎さん・・・・・・。
直接は関わらない二人ですけど、事の始まりと終わりに立ち会いました。
結局どうなったのさ、というもやっと感は残るので(肝心な所が書かれていない)好き嫌いが別れそうなお話です。
私は好きです。井戸らしい最後だな、と思います。
色々語り継がれている皿屋敷、あなたはどう取りますか、どう思いますか、あなたの思うように考えてお話を作ってくださいと問い掛けられているお話です。